摂食・嚥下機能障害とは
物を食べる、のみこむと言う動作を「摂食・嚥下」とよびます。われわれは、この動作を毎日くり返すことで生命を維持し、食べる喜びが生きる喜びに、そして自らの生活のリズムを維持しています。食べること、のみ込むことがうまくいかず、それ自体がつらくなり、時には間違って気管に入ってしまうことを摂食・嚥下障害とよびます。
誤嚥性肺炎について
日本人の死亡原因の第3位は肺炎です。肺炎で死亡する人の95%は65歳以上であり、90歳以上の男性では死亡原因の1位に順位があがります。高齢者の肺炎の70%以上が誤嚥に関係し、75歳以上の約30%に誤嚥を認めるとのデータもあり、在宅での栄養管理における最大の注意点と言われています。特に、高齢者の誤嚥性肺炎の特徴は症状が乏しいので、発見が遅れ、繰り返すことも多く、難治性、重症となりやすいとされています。
誤嚥性肺炎は、嚥下障害や咳嗽反射の低下が原因でとされ、細菌が食物、唾液、胃液と共に肺に流れ込んで生じます。高齢の患者さんは、必ずしも食事ののみこみや逆流だけでなく、寝ている間に無意識に唾液が気管に流入して発症することもあります。これらは、口腔ケアで十分に口腔内を清潔に保つことで予防できますが、摂食・嚥下障害が原因の誤嚥性肺炎は、繰り返すだけでなく、しばしば重症化します。
誤嚥性肺炎を疑う症状は
食事中に咳が出る、ムセるというのは、誤嚥性肺炎が最も疑わしい症状です。しかし、高齢者では、症状がはっきりしない、はっきり言えない場合があります。食事中に苦しそう、赤ら顔になる、異常に汗をかくなども要注意です。また、食事に時間がかかる、食事をいやがる、好みがかわった、食事後につかれているなども摂食嚥下障害を疑う所見です。
食後のチェックも大切で、口の中に食事が残っていたり、口臭にも気を付けましょう。また、のどがゴロゴロいっていたり、痰がきたなくなる、熱が出るのも誤嚥症状です。これらを発見した場合には、早めの内科病院の受診をおすすめします。
以下に当院が推奨している聖隷式嚥下質問票がありますので、参考にしてください。
聖隷式嚥下質問票
Aが1つでもあれば摂食・嚥下障害、Bが1つでもあれば疑いです
肺炎と診断されたことがありますか? |
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痩せてきましたか? |
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物が飲み込みにくいと感じることがありますか? |
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食事中にむせることがありますか? |
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お茶を飲むときにむせることがありますか? |
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食事中や食後、それ以外の時にものどがゴロゴロ(痰がからんだ感じ)することがありますか? |
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のどに食べ物が残る感じがすることがありますか? |
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食べるのが遅くなりましたか? |
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硬いものが食べにくくなりましたか? |
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口から食べ物がこぼれることがありますか? |
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口の中に食べ物が残ることがありますか? |
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食物や酸っぱい液が胃からのどに戻ってくることがありますか? |
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胸に食べ物が残ったり、詰まった感じがすることがありますか? |
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夜、咳で寝られなかったり目覚めることがありますか? |
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声がかすれてきましたか?(がらがら声、かすれ声など) |
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受診のポイント5か条
- 先ず、高齢者(75歳以上)や重病のある人(特に脳神経疾患)は誤嚥性肺炎を常に疑いましょう。
- 食事中に、咳こみやムセに注意しましょう。
- 食後に、口の中に食事が残っていませんか。
- 食事がつらそう、くるしそう、時間がかかることはありませんか。
- 特にほかに原因がなく、熱がでていませんか。
これらの症状でお困りの方は、当院までお問い合わせください。耳鼻科、歯科紹介の上、治療方針を相談します。ただし、現在は院内での訓練、リハビリ等は行っておりませんのでご了承ください。